佳純と兄たちの情報をすべて把握しているのは、長兄と次兄のみだった。
 
 手紙をファイルにしまい込んで棚に戻し、学生鞄を下げて、初日を迎えた文化祭へ向かった。

   ○

 待ち合わせ場所には、すでに夕莉がいた。
 茶色いセミロングの髪を今日は結い上げていて、可愛らしいバレッタで止めていた。おめかししてきたな、と佳純はからかいたくなった。自分もサイドアップに結んでいるので、女心はいつどこでも通じ合っているものらしい。夕莉と落ち合うと互いに褒めあい合戦をした。

 学校にはたくさんの客が訪れていた。受付で渡されたパンフレットを持って、大人と子どもが混ざりながらひしめき合っていた。

「人ごみ、平気?」

 佳純が確認するように尋ねると、夕莉は毅然と答えた。

「本当は苦手なんだけど、今日はがんばる。先輩たちと遊びたいもん」

 だいぶ強がっているようにも見えたが、彼女がこの祭りに懸けている思いを察すれば、余計な言葉はいらなかった。

 少しして、夏央が冬華を連れてホールを抜けるのが見えた。二人で大きく手を振ると、夏央と冬華はすぐに気づいてくれて、手を振り返しながら渡り廊下に入った。