電話を切ろうとすると、夕莉があわてたように「もう一つだけ訊きたいんだけど」と言った。
「何?」
「飯塚舞衣《いいづか まい》っていう上級生、覚えてる?」
「……ええと、誰だっけ」
佳純が記憶を探っていると、夕莉の不安そうな声がした。
「二年生って自分で言っていたから、先輩なんだろうけど。でもボランティア部じゃなさそうだし。お兄ちゃんと参考書借り合っていた仲だから、繋がりはあるんだろうけど」
「その飯塚舞衣さんがどうしたの?」
すると夕莉は押し黙ってしまった。しばらくして、
「……ごめん、やっぱり何でもない。夜遅くまでごめんね」
と返事がしたので、佳純もそれ以上は何も言わず、「おやすみ。また明日」と告げると互いに電話を切った。
アイフォンを充電器に入れて部屋の電気を消したところで、佳純ははたと気づいた。
翠が最後に妹のそばにいた日、彼女がやって来た。夕莉と翠が教室で言い合いをしていた原因。
翠は、彼女のところに行ったのか。
合点がいくと今度は目が冴えてしまい、なかなか寝付けなかった。
○
『佳純へ。
「何?」
「飯塚舞衣《いいづか まい》っていう上級生、覚えてる?」
「……ええと、誰だっけ」
佳純が記憶を探っていると、夕莉の不安そうな声がした。
「二年生って自分で言っていたから、先輩なんだろうけど。でもボランティア部じゃなさそうだし。お兄ちゃんと参考書借り合っていた仲だから、繋がりはあるんだろうけど」
「その飯塚舞衣さんがどうしたの?」
すると夕莉は押し黙ってしまった。しばらくして、
「……ごめん、やっぱり何でもない。夜遅くまでごめんね」
と返事がしたので、佳純もそれ以上は何も言わず、「おやすみ。また明日」と告げると互いに電話を切った。
アイフォンを充電器に入れて部屋の電気を消したところで、佳純ははたと気づいた。
翠が最後に妹のそばにいた日、彼女がやって来た。夕莉と翠が教室で言い合いをしていた原因。
翠は、彼女のところに行ったのか。
合点がいくと今度は目が冴えてしまい、なかなか寝付けなかった。
○
『佳純へ。