自分の固い髪質とコンプレックスのそばかすが、これほどまでに恨めしいと思ったことはなかった。

 だから、勇気を出して声をかけた。ただ仲良くなりたいとひたすらに願っていた。卑しい気持ちも確かにあった。けれどそれ以上に、この人たちとちゃんと釣り合う関係になりたかった。

 兄が離れていったのは、もしかしたら自分のせいじゃないかと思うと、止まらなかった。夕莉に申し訳なくて、二人とも兄の話題を軽妙に避けていた。

 夕莉が兄のことを話し出したのは、今日が初めてである。彼女が兄に突き放されて大泣きしたあの時から、夕莉はずっと家族のことについて黙っていた。兄が寮生活をしていることを知ったのも、先生づてから聞いた。

 ゆっくりと帰路を歩きながら、二人はそれぞれの過去について沈黙を貫いていた。

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 冬華からメールが来たのは、文化祭が三日後に迫った、慌ただしい時間だった。

 自分たちを最優先してくれるらしい。夏央とも話がついて、一日目の午後と後夜祭の時間帯、一緒にいてくれるということだった。