夕莉は口ごもると、おもむろに頭を抱えた。苦しそうな息を吐き、側頭部に手をやりながら歩いていた足を止めた。

「頭痛? どっかで休もうか」

 佳純が背中を撫でると、夕莉のか細い声が聞こえた。

「大丈夫……。すぐに治るから……」

 実際、立ち止まっていた時間はそれほど長くなかった。夕莉は「いたた……」と呻きながらも、再び歩き出した。そして言った。

「お兄ちゃんのこと考えると、頭痛がひどくなって……。もう考えないようにしているんだけど……」

 夕莉の悔しそうな声を聞きながら、佳純はあの日、入学式の時に出会ったこの双子の兄妹を、思い出していた。

 出席番号順に座らされた講堂の座席。自分の前に、寄り添い合うように二人が座った。

 席に着く直前、兄のほうが一度だけ、後ろを振り返って、デイケア組の面子を見た。
 
 その美貌に、釘付けになった。

 すぐに妹も兄のほうを向いた。妹もまた可愛らしい顔立ちをしていて、儚い美貌が目に眩しかった。兄は対照的に、耽美的な美しさを秘めた冷たい瞳で、つまらなそうに佳純たちを一瞥した。

 その排他的な雰囲気に、佳純の心は持っていかれた。