夕莉がそう発言したことに、佳純は少なからず驚いた。引っ込み思案な彼女の性格を察するに、夏央たちがそばにいてやれないのなら、欠席すると思い込んでいたからだ。

「夕莉がいいなら、いつでも付き合うよ。二日とも出るつもりなの?」
「うん。もしかしたらお兄ちゃんに会えるかもしれないから」

 久しぶりに出てきた翠の名に、佳純は少しドキリとした。

 今や接点は何一つないのだが、彼の低くて色っぽい声や、整ったクールな顔立ち、そっけない態度など、何一つ忘れたことなどなかった。それは夕莉も同じだろう。
 
「……翠君のクラス、わかる?」
「二組。先生から聞いた」

 夕莉はぐっと悲しげな表情を浮かべると、帰り道を歩きながら、佳純に兄のことを話した。

「お兄ちゃん、一般クラスに移ったけど、やっぱり体力的に、皆についていくのが大変みたいなの。体育の授業で何度も発作起こしたり、ほかにもいろいろ……。体育なんて見学すればいいのに」
「きっと、一度休んだらその分ハンデだと思われるから、嫌なんじゃないかな。皆と対等でいたいんだと思う」
「それはわかるけど……」