ふいに話題が今の養い主に移った。佳純は一呼吸おいて、はっきりと口にした。

「二人とも優しいです。特に問題ありません」

 嘘はついていない。聡子と稔は家族と離別した佳純をここまで育ててくれた。二人はいつだって温かかった。

 十五分ほどの診察を終えて、佳純は病院を出た。担当医は人気の医師なので一人に対しての診察時間はどうしても短くなる。あの穏やかな人柄が、見る者を安心させるのだろう。ここの大病院は有名だ。会計待ちも近くの薬局も混んでいる。最初の頃は辟易したがいくらか慣れた今では、こうして文庫本を読みながら待つこともできるようになった。

 ようやく会計が終わり、薬局で薬をもらうと、駅まで歩いた。十月に入る空は秋雨前線の影響で灰色に濁っていた。傘をカツ、カツと地面に鳴らしながら向かい、駅構内の大型書店に寄った。

 積み上げられている書籍や雑誌などを眺めるのは楽しい。今の話題や流行はこれなのか、とすぐにわかるからだ。世間が何に興味があるのか、佳純は知ることが楽しかった。

 話題になっている少女漫画の最新刊を一冊買い、電車に乗った。停車駅で降りて次はバス停に向かう。