夕莉。
私と似ている子。放っておけない子。
翠。
とてもかっこいい人。美しい人。
私の初恋。
○
病院の待合室は今日も混雑していた。学校は外来日で休みとなっている。まだ朝の九時台なのに、この心療内科は人気があるのか、いつでも人が途切れたことがなかった。
佳純は空いた席に腰を下ろして、文庫本を広げた。読むのはたいてい「さらりと読める軽い話」である。佳純にとって「心に突き刺すような」重いメッセージ性のこもった物語は、余計に精神を悪化させるものだった。ティーンズ向けの文庫や少女小説などはまさに流し読みするのにもってこいの話なので、一番多く手に取っていた。
ヒロインがついに相手役の男の子とキスをできそうな雰囲気まで読み進んだところで、名前を呼ばれた。これは王道のラブストーリーなのできっとヒロインは上手く行くのだろうなと思いながら、佳純は本を閉じて診察室に入った。
担当医と挨拶を交わして、近況報告をした。
「友達ができたんですね。それはよかった」