あの家は、多分、間違って生まれたのだろうと思った。
 自分の本当の家はここなのだと決めつけたかった。
 
 けれど心のどこかで、なぜこんなことになったのか、家族はなぜバラバラになったのかという気持ちが湧き上がり、その負の感情に苛まれては悪夢を見た。
 
 ようやくぐっすりと眠れるようになったのは、行きつけの心療内科の医師に「あなたは運がなかっただけ」と言葉をかけられた時からだ。それ以来、不思議と悪夢は見なくなった。落ち着きを見せ始めた佳純に聡子たちはほっとしたように愛情を注いだ。
 
 ただ、悪夢を見なくなった代わりに、明け方頃に目が覚めてしまう癖がついた。そんな時は自室のカーテンを開けて夜明けの空と街並みを眺めた。青々とした色合いと静まり返った空気が気持ちよかった。
 
 佳純は現在、少し特徴のある子を集めた特別学級のある中学校の面接を受け、そこに通っている。学校には遠くから来た生徒たちのための学生寮があり、そこも一般とデイケア組に分かれている。学校帰りには月に二回の診察を受けている。明日はその診察日だ。
 
 寝る時間が来てベッドにもぐりながら、佳純は双子のことを思っていた。