冬華はさっぱりと言った。「何とか勇気出して来られない?」と誘う彼女に、佳純は一つの提案をした。

「一日中遊ぶのは無理ですが、午前か午後、または後夜祭だけなら」

 了承の意を示した佳純に、夕莉がチラッと不安そうな目を向ける。佳純は彼女に視線を合わせ、大丈夫だよ、とサインを送った。

「ふむ、時間を区切るわけか。後夜祭は友達との付き合いもあるしなあ……。午前か午後にどう?」

 冬華がキリッとした笑顔で提案した。今度は佳純が夕莉のほうを見た。夕莉はまだ不安げな顔をしていたが、ボソッと「佳純が行くなら……」と茶色がかった瞳を伏せて言った。

「詳しいことはまたあとで連絡するよ。文化祭は出るって方向でいい?」
「はい。待っています」

 佳純の返事に冬華は嬉しそうな表情を浮かべ、二人を通り抜けて先に渡り廊下を渡って部室に帰った。佳純と夕莉も下駄箱へ向かい、帰り道を歩いた。

 日差しを肌に浴びながら、秋の匂いを纏った風を頬に受けて、佳純はつぶやいた。

「文化祭、私たち初めてだね」
「……うん」