「フルーツバスケット!」と夏央が手を叩いた。とたんに皆はわっと席を立ち、空席の椅子へ向かった。佳純はすばやく席を取り、夕莉を目で追いかけた。彼女はおろおろと戸惑って、ほかの生徒に椅子を取られてしまった。余った生徒は夕莉となった。

「夕莉、またお前かい! どんくせーなあ」

 夏央がからかうように言うと、皆もどっと笑った。夕莉は拗ねたように夏央をにらみながら、それでもどこか楽しそうに問題を考え始めた。夕莉が外れるのはこれで三回目となる。

「じゃあ……。朝ご飯はパン派の人!」

 夕莉が問題を出すと、該当した生徒がわっと動く。すかさず席を取り、今度は外れることから免れた。

 周りの子より頭一つ分小さい男子生徒があぶれる。そこで時間が来て、先生の「今日はここでお開き~」と軽やかな声を合図に皆はがやがや話しながら椅子を片付けて机を戻した。

 もうすっかりボランティア部はデイケア組に溶け込んでいた。夏央と冬華は周りから人気があるらしく、二人のそばにはいつも誰かしらくっついていた。