それから翠は、なるべく親に迷惑をかけない自殺のやり方を調べ始めた。首を吊るか、腕を切るか、ほかにもいろいろな方法を学んだ。妹にどの死に方が一番いいのか相談したりもした。二人は死の世界に夢を見始めた。

 妹の参考になればと思い、五年生になる時、一人で腕を切った。

 すぐに発見されて病院に運ばれた。大事には至らないという医師の言葉を聞いて、翠は、死ぬことはそう簡単にできるものではないことがわかった。
 
 妹は翠に問いかけた。
 私のこと好き? 
 ともに死んでくれることを待ち望んでいる目だった。
 
「……そこから、どうやって一般クラスに編入する決意に至ったの?」

 舞衣は静かに聞いた。翠は淡々と返した。こわばっていた表情はいくらか和らいでいた。

「単純に、死にたくなくなったからだよ」
「……気持ちが変わったの?」
「ああ」

 翠は地面の砂を足でいじくりながら、思い返すように言葉を紡いだ。

「親に泣かれたんだ。両方とも泣いていて、すごく叱られた。もう二度とこんなことするなって言いつけられた。
 その時、俺はわかったんだ。