舞衣が、息を切らして、帰りの支度の姿で自分を見つけ出してくれた。

「……本当に、神出鬼没、だな、お前。ここ探すの、大変じゃ、なかった?」
「この公園、地元じゃ有名ですぐにわかったから。よかった、すぐ会えて」

 彼女はそう言うと、はっと気づいたように、翠の顔中に滴る汗を見て、ハンカチを取り出して翠の顔を拭いた。

「大丈夫? あんた、まさかここまで走って……」
「……うん」

 翠が俯くと、舞衣が背中をさすってくれた。隣に座り、呼吸を整える翠を手厚く介抱した。

 ずっとこうしてほしかった。
 同情ではなく、理解を示してほしかった。

「だいぶ落ち着いてきた?」

 舞衣の甘く響くアルトの声に耳を傾けながら、翠は「もう、平気」と精一杯の強がりを見せた。

 舞衣はほっとしたように息を吐いた。

「ああ、なんか安心したら喉渇いた。ジュース買ってくる」

 舞衣はそう言うと、公園内の自動販売機で飲み物を購入した。翠の分まで缶ジュースを渡すと、再び隣に座った。
 
「ジュース代、払うよ」
「サンキュー。じゃあちょうだい」