雲の向こうから、太陽が真上で光を注いでいた。太陽の位置がまだあんなに高い。朝なのか、昼なのか。腕時計を見るのも面倒くさかった。
 
 アイフォンがメールの振動を伝えた。授業中であるはずなのに、彼女はすぐに返事をくれた。
 
『すぐに行く。どこにいるの?』
「……返信、はえー」

 翠は思わず吹き出した。ああ、愛されている、と実感した。
 
 公園のネームプレートを見つけ、名前と場所を特定して送信すると、ふいに彼女を試したくなって、

『何でそこまで俺を庇うの。こんなに馬鹿な生き物なのに』と送った。

 するとまたすぐに受信メールが届いた。

『あんたのことが好きだからって理由じゃ駄目なの?』

 舞衣の文章は、迷いがなかった。きっと彼女は、言いたいことを言いたいだけ、好きなように伝えられる力を持っているのだろう。

 意地で何か洒落た台詞を送りたかったが、ありがとうとか、嬉しいとか、そんな使い古された言葉では納得できなくて、どんな文章を送ればいいのかしばらくアイフォンを握りしめて考えていると、影が下りた。

「翠」