午後七時から九時まで、夕食の時間が決められているので、翠はいつも一番乗りで、がらんと空いている食堂に足を運んでいた。
 
 テーブルに両親の綴った手紙を置く。料理担当の先生が作ってくれるものはどれも美味しかったが、やはり母の少し薄味気味の味付けが、この料理を食べるごとに、思い出されてしまうのだった。
 
 父と母の文面は似ていた。寒い日が続くので体調に気をつけることと、たまには家に顔を出すということ。そして、学校に馴染めたかということ。
 
 翠はその文に決まった返事を書く。学校では何も問題なく日々を過ごせています。友達もできました。寮ではその友達と一緒にくだらないことで笑いながら生活しています。だから何も心配しないで。
 
 まるで演劇のようにすらすらと返事の内容を嘘で固めることに、もう感じるものはなくなっていた。
 
 妹からの手紙が来ていた。花柄プリントの便箋。翠はそれをグシャリと丸めて、ポケットに押し込んだ。
 
 夕飯を食べ終え、トレイを返却カウンターに戻し、両親の手紙だけを大事に持って、ワンルームの部屋へ行った。