初めて会った時、彼女はそこらへんにいる野良猫を見つけたかのような調子で、言った。

 デイケア組?

 彼女が何の気なしに尋ねたので、翠はこくりとうなずいた。

 ボランティア部に遊びに来ていた彼女とは、その日は二言三言交わしただけで終わった。
 
 しばらくしてまた会い、日常会話のような他愛のない話をして、別れ、そして数日後、再び会って少し深い話をして、気がつけば自分の隣に彼女は歩いていた。
 
 そして同時に、妹はどこか遠くへ行った。
 
 自分が遠ざけた。後悔はなかった。むしろ清々しかった。
 
 それなのになぜ、時々、胸がつぶされそうに痛むのだろう。
 
 本を開き、文字を追うことに集中し始めた舞衣を邪魔しないように、自分も読書にふける。お互いがお互いのペースを乱さないこの関係が、何よりも心地よかった。

「保険係になんかならなきゃよかったなあ」

 ふいにその言葉だけが翠の耳に大きく響いた。周りを気遣うひそひそささやくような声だったのに、なぜか矢を放つようなスピードで突き刺さった。

「うちのクラスにさあ、移ったやつなんだけど、これが大変で」