その後は担任が挨拶を済ませ、すぐに入学式となった。
その入学式もあっという間に終わり、流れるように俺の高校生活一日目は終了した。帰り際に花が「お家どこ?一緒に帰ろうよ!」なんて元気に声を掛けてきたのでそれを丁重にお断りすると「連絡先交換してくれるなら返してあげる!」との事だったので仕方なく自分の連絡先を教え、そそくさとその場を後にした。
「ただいま」
「あら、お帰りー、入学式はどうだった?」
俺が玄関で帰宅の知らせをすると、母は実に興味津々な様子でそう訪ねてきた。母は仕事の都合上入学式には来ていなかった。
「どうも何も別にいつも通りだよ」
「あら、そうなの、友達は出来そう?」
──友達………友達…か…。
「ああ、一人…花さんって高校初日から俺に話しかけてくるような物好きな人がいて、その人とは仲良くなれそうだよ」
俺が淡白に…それでも本心からそう言うと、母は「そう!じゃあ今日はごちそうね!」と言ってやけに嬉しそうにキッチンへ走って行った。
そのやり取りを終えた後、俺は自室のベッドに倒れ込んでいた。
やはり学校という環境は苦手だ。教師からの見定めの目、生徒からの警戒心と好奇心の降り混ざった目、そのどれもが俺を酷く疲れさせた。
…それでも今日はそんな学校を少し楽しいと思った自分もいた。……こんな事はいつぶりだろうか。
「星宮花、か……」
そんな風に思えたのはやはり彼女のお陰だろう。慌ただしくて、俺には無い物を持っていて、どこか少し不思議な、そんな彼女のお陰なのだろう。
気づけば俺はイヤホンを耳に繋げて音楽を聴きながらスケッチブックに鉛筆を走らせていた。
絵を描くのは好きだ。自分の表現したい物を一番手頃に形に出来る。それに、無駄な事を考えなくても良いのだ。だから衝動的に筆を進めた。
何時間たったのだろうか…。気づけば俺の作品は完成していた。
「…何だこれ」
そこには涙を流して笑う星宮花が描かれていた。その笑顔は酷く苦しそうで、それでいて慈愛に満ちているものだった。それはまるで彼女が自分を犠牲にして誰かを救おうとしているような、そんな被虐的な魅力があった。
俺は今日見たあの快活な彼女の笑顔を描こうとしていたのに、気づけばイメージとは違う彼女の笑顔を描いていた。
──こんな表情は見たこともないのに…どうして……?
そんな事を思いながらも俺は自分が描いたその絵から目が離せないでいた。そしてその絵を見ているとあの夢を見た後の朝のような、現実から乖離したような気持ちになった。
──ポン。
絵の中の彼女に引き込まれていた俺の意識をそんなスマホの通知音が絶ちきった。どうやらメッセージアプリの通知のようだ。
──母さんかな。わざわざスマホなんか使わず直接呼んでくれればいいのに。
そう思いながらも俺はスマホのメッセージアプリを起動させる。
だか、それは母からの通知ではないようだ。…母さん以外から連絡が来るのなんて何年ぶりだろうか。
『は な さんがあなたを友達追加しました』
『追加したよ!よろしくね!荒野くん!』
メッセージはそんな内容だった。だが、何となくすぐに返信するのは尺だったのでそのまま放置して、夕食を食べることにした。
夕食を食べ終わって手早く風呂を済ませた僕は、今日の疲労感からか、花への返信を忘れたまま眠りに落ちてしまった。
その入学式もあっという間に終わり、流れるように俺の高校生活一日目は終了した。帰り際に花が「お家どこ?一緒に帰ろうよ!」なんて元気に声を掛けてきたのでそれを丁重にお断りすると「連絡先交換してくれるなら返してあげる!」との事だったので仕方なく自分の連絡先を教え、そそくさとその場を後にした。
「ただいま」
「あら、お帰りー、入学式はどうだった?」
俺が玄関で帰宅の知らせをすると、母は実に興味津々な様子でそう訪ねてきた。母は仕事の都合上入学式には来ていなかった。
「どうも何も別にいつも通りだよ」
「あら、そうなの、友達は出来そう?」
──友達………友達…か…。
「ああ、一人…花さんって高校初日から俺に話しかけてくるような物好きな人がいて、その人とは仲良くなれそうだよ」
俺が淡白に…それでも本心からそう言うと、母は「そう!じゃあ今日はごちそうね!」と言ってやけに嬉しそうにキッチンへ走って行った。
そのやり取りを終えた後、俺は自室のベッドに倒れ込んでいた。
やはり学校という環境は苦手だ。教師からの見定めの目、生徒からの警戒心と好奇心の降り混ざった目、そのどれもが俺を酷く疲れさせた。
…それでも今日はそんな学校を少し楽しいと思った自分もいた。……こんな事はいつぶりだろうか。
「星宮花、か……」
そんな風に思えたのはやはり彼女のお陰だろう。慌ただしくて、俺には無い物を持っていて、どこか少し不思議な、そんな彼女のお陰なのだろう。
気づけば俺はイヤホンを耳に繋げて音楽を聴きながらスケッチブックに鉛筆を走らせていた。
絵を描くのは好きだ。自分の表現したい物を一番手頃に形に出来る。それに、無駄な事を考えなくても良いのだ。だから衝動的に筆を進めた。
何時間たったのだろうか…。気づけば俺の作品は完成していた。
「…何だこれ」
そこには涙を流して笑う星宮花が描かれていた。その笑顔は酷く苦しそうで、それでいて慈愛に満ちているものだった。それはまるで彼女が自分を犠牲にして誰かを救おうとしているような、そんな被虐的な魅力があった。
俺は今日見たあの快活な彼女の笑顔を描こうとしていたのに、気づけばイメージとは違う彼女の笑顔を描いていた。
──こんな表情は見たこともないのに…どうして……?
そんな事を思いながらも俺は自分が描いたその絵から目が離せないでいた。そしてその絵を見ているとあの夢を見た後の朝のような、現実から乖離したような気持ちになった。
──ポン。
絵の中の彼女に引き込まれていた俺の意識をそんなスマホの通知音が絶ちきった。どうやらメッセージアプリの通知のようだ。
──母さんかな。わざわざスマホなんか使わず直接呼んでくれればいいのに。
そう思いながらも俺はスマホのメッセージアプリを起動させる。
だか、それは母からの通知ではないようだ。…母さん以外から連絡が来るのなんて何年ぶりだろうか。
『は な さんがあなたを友達追加しました』
『追加したよ!よろしくね!荒野くん!』
メッセージはそんな内容だった。だが、何となくすぐに返信するのは尺だったのでそのまま放置して、夕食を食べることにした。
夕食を食べ終わって手早く風呂を済ませた僕は、今日の疲労感からか、花への返信を忘れたまま眠りに落ちてしまった。