松野さんも諦め顔で苦笑している。


「みなさん1人で来られたんですね」


あたしは空気を変えるためにそう言った。


松野さんは大きく頷く。


「ここのペンションはスキー客の方が多く来られるんですが、1人のお客さんも多いんです。柴本さんたちはまだスキー場は見られていないんですよね?」


その言葉にあたしは頷く。


「きっと、行ってみればその理由がわかります」


松野さんの言葉に弘子がニコニコと笑顔で頷いた。


「あのスキー場はこじんまりしていて、団体客向けじゃないのよ」


「そうなんですね」


あたしと弥生はネットで調べてここに来たのだけれど、スキー場の大きさまでは確認していなかった。


「でも安心して。ここにいる5人が一気に滑ったって平気なくらいの広さはあるから」


弘子が冗談めかしてそう言い、笑った。


「それにしても、すごい雪ですね」


小沼さんが窓の外を見て呟く。


雪は静かに降り積もり、外の景色は真っ白だ。


大きな窓から外を確認してみると、来たときには見えていたアプローチは完全に雪で隠れていた。


これならスキーは楽しめそうだ。


そう思った時だった。


広間の奥に置かれていた黒電話が突然なり始めたのだ。