「身分証明だけ確認して、財布はすぐに警察に届けた。だからあいつも安心したんだろうな。俺みたいなやつが財布を拾って警察に届けるわけがないって。きっと、誰か他の人が拾ってくれたんだと思い込んで、ノコノコここまでやってきたんだ」


そして、殺された……。


「山に現金はあるんですか?」


聞いたのは弘子だった。


「もちろんだ」


「それも合わせて警察に連絡しましょう」


あたしはそう言いペンションの外に出た。


膝がうまるくらい残った雪をかき分けて電波がよく届く場所まで移動する。


そして110番を押したのだった。