☆☆☆

小沼がここでアルバイトをしたいと申し出たのは、久遠さんが泊まりに来ると知ったからだったそうだ。


小沼を信頼していたオーナーは承諾し、スペアキーも小沼に預けてしまった。


事件が起こったのはその翌日の今日ということだ。


「どうして久遠さんが泊まりに来るとわかったんですか」


あたしはいまだ松野さんに拘束されている小沼へ向けて聞く。


「予約票を見たからだ」


小沼は観念したように返事をする。


さっきから抵抗する気もないようで、地べたにうつぶせにされたまま顔も上げない。


「久遠さんが現金を掘り起こそうとしているって、どうしてわかったんですか?」


今度は弥生からの質問だ。


「……見られてたんだよ、久遠のやつに」


チッと舌打ちが聞こえてくる。


現金を埋めるところを見られていたということだ。


「でも、それだけじゃ久遠さんかどうかわからないんじゃないですか?」


「俺は覆面を被ってたけど、あいつの顔はシッカリ見た。それに、あいつが逃げだした時に財布を落として行ったんだ」


それで久遠さんの身元がバレてしまったということか。