「松野さんから聞きました。小沼さんはここのオーナーの親戚らしいですね。このペンションも何度も利用していたとか」


小沼さんは答えない。


眉間にシワを寄せて黙り込んでしまった。


「スペアキーは小沼さんが持っていたんです。オーナーとどういうやりとりがあったかわかりませんが、今回このペンションの管理は小沼さんがしていた。違いますか？」


言い終えた時、とたんに部屋の中に太陽の光が差し込んできた。


雪が止んでから気温が上がり、窓を半分埋めていた雪が溶けだしたのだ。


小沼さんは何かを言い返そうと歯ぎしりをしていたが、やがてふっと肩の力を抜いてほほ笑んだ。


その変化に驚き、たじろぐ。


「確かに、ペンションの管理はしていました。でもスペアキーは受け取っていません。それに、どうして俺が久遠さんを殺す必要があったんですか？」


その言葉にあたしは笑みを返す。


「別に、小沼さんが殺したなんて言っていませんよ」


そう伝えると小沼さんから笑顔が消えて舌打ちが聞こえてきた。


「スペアキーについては後から探せばわかることです。次に久遠さん殺害の動機についてですが、これはまだハッキリとわかっていません」


正直に言うと、小沼さんはフンッと鼻で笑った。


「ですが、久遠さんはなにかを探しに来たようです。荷物の中からスコップが出てきたので、土に埋められているなにかでしょうね。犯人はそれを掘り返されたくなかった。だから久遠さんを殺したんだと思っています」