それ以外にはなにも入っていない。


「スコップ?」


弥生が後ろから覗き込んで首をかしげる。


あたしもこれには首をかしげてしまった。


「なんのためのスコップだろう?」


「そりゃあ、なにかを掘り起こすためだよね。雪かきにも使えるかもしれないけど、基本的には土だよね」


久遠さんはなにかを掘り起こすためにここへ来た?


一体、なにをだろう?


あたしはスコップを組み立ててしげしげと見つめた。


まだ使われた形跡のない、新しいものだ。


この日のために購入したようだとわかった。


「あ、そういえばさぁ」


弥生がふとなにか思いだしたように呟く。


「なに?」


「そのスコップで思い出したんだけど、小沼さんってこのドアをスコップで壊して入ったよね?」


「うん、そうだったね?」


その時のことはもちろん覚えている。


小沼さんがスコップを持ってきてくれたのだ。


「どうしてスコップのありかなんて知ってたんだろう」


「え?」