☆☆☆

「窓に鍵がかかってたってことは、外には出られないね」


雪の間に戻ってきて弥生が呟く。


窓の外を見るとさっきまで降っていた雪はようやく止んで、薄明かりが差し込んできていた。


このまま雪が溶けてくれればいいけれど、今日の夜がまた心配だった。


「鍵、簡単なものだよね」


あたしは窓際に立ち、鍵を確認する。


一般的な家で使われているクレセント錠だ。


「どうしたの?」


「これなら外からでも鍵をかけることができるんだよ」


あたしはそう答え、荷物の中から裁縫セットを取り出した。


スキーウェアなんかが破れた時、応急処置できるように持ってきておいたのだ。


そこから糸を取り出して、1メートルほどの長さに切る。


糸をクレセント錠にひっかけて引っ張ると、鍵は簡単に締まる。


これは窓を閉めた外側からでもできる行為だ。


細い糸は鍵をかけた後に外から引っ張って回収することもできる。