「だって、久遠さんは首を吊らされてたんだよ? 弘子が1人でそんなことできると思う?」


その提案には弥生もうなり声をあげた。


弘子とあたしたちは同じような身長だ。


窓枠に手を伸ばしてもギリギリ届く程度。


そんな弘子が男の体重を支えて首つりさせるなんて、できるとは思えなかった。


「確かに、無理かもね。でも誰かが一緒だったと思えばできる」


弥生の言葉にあたしは唖然としてしまった。


「そっか。犯人が1人って決まったわけじゃないんだ」


「そうだよ紗也香。もう1人の犯人が久遠さんを殺して部屋を出る。その後弘子さんが内側から鍵をかけて窓から脱出すれば密室は完成するんだから」


だとすればやっぱり雨どいを伝って登れるかどうか、窓の鍵がどうなっていたのかが問題になってくる。


「松野さんに窓の鍵がどうなっていたか聞いてみよう」


遺体を下したのは松野さんと小沼さんの2人だ。


「うん」


あたしたちは料理室へと急いだのだった。