冷えた体が温められてホッとすると同時に、広間の奥にある大きな暖炉が目に入った。


暖炉の中には明々と火が入れられていて、あれでこの部屋全体が暖められていることがわかった。


それから手前へと視線を移動させると、大きな木製のテーブルが2つ。


それを取り囲むように深いグリーンのソファが並べられていた。


ソファには同年代くらいの女性が1人と、大柄な男性が1人、そしてみんなから離れた奥にもう1人男性が座っていた。


「どうぞ、空いているところへおかけください」


男性に言われて、あたしと弥生はおずおずと入口に一番近い場所に腰を落ち着けた。


「私はこのペンソンでシェフをしております、松野辰哉(マツノ タツヤ)と申します」


あたしたちを出迎えてくれた男性が帽子を取って会釈する。


笑うとエクボができて、まるで少年みたいだ。


でも、シェフということはそれなりに実績ももっている人なんだろう。


あたしと弥生は松野さんへ向けて軽く会釈をした。