☆☆☆

久遠さんの遺体はベッドに寝かされていて、顔には白いタオルが掛けられていた。


顔を見なくて済むことに安堵し、近づいて行く。


床に落ちていた糞尿は松野さんが掃除してくれたみたいだ。


本当ならあまり掃除しない方がいいのだろうが、ほっとくと臭いはきつくなるから配慮してくれたのだろう。


「変なところってどこ?」


弥生に聞かれてあたしは久遠さんの左手に懐中電灯の光を当てた。


そこにはさっき見たのと同じように赤く染まっている。


「見て、指先が赤いの」


「本当だ……」


「どうして赤くなってると思う?」


「どうしてだろう? 首を吊ったとき、やっぱり怖くなってロープを外そうとしたとか?」


弥生の解釈にあたしは頷いた。


自殺志願者でもそういうことはあると思う。


第一、