あたしはゴクリと唾を飲み込んだ。


暗くなった廊下へ出て雪の間へ入り、スマホを確認する。


雪のせいか電波状況は更に悪くなっている。


圏外という文字表示に舌打ちしたくなった。


でも、広間へ行けば黒電話がある。


あれは使えるはずだ。


スマホで廊下を照らしながら歩き、広間へと移動する。


暗い部屋の中暖炉の火だけで室内は照らし出されていた。


「懐中電灯です」


奥から戻ってきた松野さんが人数分の懐中電灯を用意してきてくれた。


「ここは雪山なんて、停電には備えがあります。安心してください」


そう言う松野さんの表情は硬い。


きっと、久遠さんの首つりがあったせいだろう。


あたしは頷き、そのまま黒電話へと近づいた。


祈るような気持で受話器を取りあげ、耳に当てる。


しかし、なにも聞こえてこない。


昔の電話は受話器を上げるとプーッという機械音が聞こえるんじゃなかったっけ?


祖母から聞いた話を思い出しながら、あたしは黒電話を操作する。