こんなはずじゃなかったのに……。


落胆しかけたとき、小沼さんが片手にスコップを持って戻ってきた。


「これでドアを壊しましょう」


「そんなことしていいんですか?」


弥生が聞く。


小沼さんは一瞬松野さんへ視線を向け、それから「仕方ないでしょう。これだけ声をかけても返事がないんです、この寒さで、凍死しているかもしれない」と説明した。


凍死。


その言葉にあたしは身震いをした。


その可能性は全く考えていなかった。


これだけ雪に埋もれてしまえば、いくら家の中だと言っても油断してはいけない。


「開けますから、少し離れて」


小沼さんに言われてあたしたちは氷の間から遠ざかった。


小沼さんが力まかせにスコップを振り下ろす。


バキッ! と音が響いてドアにスコップが突き刺さる。


それを無理やり引き抜いてまた振り下ろす。


どれだけの騒音が鳴り響いても、中から久遠さんが出てくる気配がない。


ドアが破壊されるたびに、だんだん恐怖心が湧き上がってくる。


もし、本当に凍死なんてしていたらどうするんだろう?