言ったのは弘子だった。


確かに、久遠が昨日座っていた席だけ空いている。


「まだ寝てるんじゃないですか?」


小沼さんがのんびりと答える。


「呼んできましょうか」


松野が入口へ視線を向けて言う。


「それならあたしが行ってきます」


立ちあがりながらあたしは言った。


久遠さんの部屋は雪の間の奥にある、氷の間だ。


ついでにコンタクトに付け替えてきたかった。


ここに入って時からメガネのレンズは真っ白だ。


「僕も行きますよ」


すぐに松野が立ちあがる。


あたしは頷き、松野と2人で食堂を出た。


暖房がきいていないエントランスを抜けて、客間のある扉を開く。


雪の間を通り過ぎて氷の間であたしと松野さんは立ち止まった。


「久遠さん。朝食の準備ができました」


松野さんが声をかける。


しかし、中から返事はない。


あたしはドアを2度ノックして声をかけた。


それでも返事はない。


「どれだけ爆睡してるんだろう」


あたしは首をかしげる。