入口から右手の壁にクローゼット。


左手にはテレビ。


テレビ台の下には小さな冷蔵庫がある。


とてもシンプルな部屋だ。


おふろとトイレは共有で、広間にはカップの自販機が設置されていた。


あたしは窓に近づき、下を覗いてみた。


丁度ペンションの裏手が見えるようになっている。


ペンションの裏側は食材などの搬入口になっていて、大きく開けている。


しかし、今は誰の出入りもなく、積った雪には足跡ひとつついていない。


山々はペンションを囲むようにそびえていて、改めてここは切り開いて作られた場所なのだとわかった。


その山も木々も、今は真っ白でクリスマスツリーみたいだ。


「この雪、いつまで続くのかな」


あたしのそんな呟きをかき消すように弥生が「嘘でしょ!?」と悲鳴をあげた。


「なに? どうしたの?」


驚いて近づくと、弥生はスマホを片手に部屋の中をグルグルと周り出した。


「それ、なんの儀式なの?」


「儀式なんかじゃないよ。スマホの電波がないんだから!」


眉根を寄せて懸命に電波を探しているが、見つからないらしい。