てっきりアンティークな置物だと思っていたので、飛び上るほど驚いた。


「ここは僕が」


立ちあがって受話器を上げたのは小沼さんだ。


大きな体を折り曲げて電話を受けている。


その様子にあたしはチラリと松野さんへ視線を向けた。


松野さんは夕飯の準備があると、厨房へ行ってしまった。


「はい……はい。わかりました」


しばらく電話をしていた小沼さんが受話器を置き、困り顔で振り向いた。


「なにかあったんですか?」


弥生が聞く。


「どうやら、この雪のせいでオーナーが立往生をしているらしいんだ」


「オーナーって、ペンションのオーナーさんですか?」


弥生の質問に小沼さんは頷く。


そういえば、ここに来てから会ったのはシェフの松野さんだけで、オーナーさんには会っていない。


ペンションに泊まるのはこれが初めてだから、こんなものなのかと思っていた。


「各自、どの部屋に泊まるかは事前に連絡が行っているはずだから好きに使っていいと。部屋の鍵は開いているということです」