7、
「アベル先生―、明日の分の野菜、ここに置いておくよー」
そう言って、厨房から勝手口から入ってきた八百屋の配達員が、箱一杯の野菜を調理台の上に置いた。
「こんな雨の中、すまないね」
アベルは箱の中からかぼちゃを手にとって、それを確かめる。
「これはいつもの農場で獲れたやつかい?」
「ああ、このあいだ先生が、ここで獲れた野菜は子供たちが喜んで食べるって言ってたから、それを持ってきたよ」
「ありがとう。子供たちも喜ぶよ」
配達員は伝票を切ってアベルに渡すと、抱えていた雨具に袖を通しながら、窓の外を見て言った。
「しかし、こんな天気じゃ、子供たちも外で遊べないから可哀そうだね」
「ああ。でもその分、部屋のなかで大暴れしているよ。今も、ちょうどお昼寝が終わったところで、部屋の中は戦場さ」とアベルは笑って答えた。

配達員を見送りアベルがプレイルームに戻ると、リュウ君が走り寄ってきた。
「先生! 着替えたよ!」
「下着も着替えたかい?」
「うん!」
「よし。じゃあ、遊ぼうか」
「先生がダーレー役ね! 僕が竜騎士やるから!」
そう言って、リュウ君はアベルの背中に飛び乗った。

窓の外では雨が降り続いていた。
園庭に面した軒の下では、ダーレーが翼を畳み、まだ昼寝を楽しんでいた。
物干し台には、テルテル坊主をつけた雷帝の槍がかけられており、そこだけに日の光が差し込んで、リュウ君がオネショをした布団が干されていた。

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現在のステータス
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名前 /アベル・ワールウインド
年齢 /30歳
ランク/C
ジョブ/保育士(LV 1)
装備 /雷帝の槍(雷属性・局地的に天候を操ることができ、物干し竿としても使用可能)
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(第2話完)