４、
「先生のドラゴンのお名前、なんていうの？」と、保育園の庭で首や翼に子供をぶら下げて、もはや遊具と化しているドラゴンを指さして、ドラゴンのアップリケが付いた服を着た子供が言った
「ダーレーだよ。」
「ダーレーは何歳？」
「120歳くらいかな」
「えー、お爺ちゃんじゃん！」
「先生のお父さんもお爺さんも竜騎士で、二人もダーレーに乗っていたんだよ。」
「えー！すごーい！　じゃあ、先生の子供も竜騎士になるの？」
「いや、それは分からないな。　それに先生にはまだ子供はいないんだ」
「そうなんだ！　じゃあ、僕が先生の子供になるから、ドラゴンの乗り方を教えてよ」
「先生の子供になるのは、難しいと思うな…」
「えー！なんでー！？」
と、かれこれ１時間近く、こんな調子で子供たちからの質問攻めに合ったあと、お昼の時間になった。
教員室で、別に用意されていた昼食を食べながら、エマはアベルに言った。
「どうですか？」
「何が？」と、アベルはエマを睨みつけて言った。
「え？　保育園のお仕事ですよ。　ダーレーはかなり溶け込んでいましたけど」
「ドラゴンは子供が好きだからな」
「じゃあ、ダーレーにもぴったりじゃないですか！　ここで決まりですね！」
「私は、ここには転職しない」アベルはピシャリと言った。
「なんでですか？　子供たち、アベルさんにも懐いているのに」
アベルは、フォークを皿の上に置いて、エマを見据えて言った。
「いいか。確かに、私はドラゴンが連れていける仕事なら特に希望がないとは言ったが、それは“何でもいい”という意味じゃない。　私は、竜騎士という仕事に誇りを持っているんだ。」
「でも、仕事は探しているんですよね？」
「仕事は探しているが、竜騎士の誇りを捨てたい訳ではない！」
「保育園で仕事することが、何で誇りを捨てることになるんですか？」
「そんなこと分かるだろう！　子供の相手だぞ！」
「子供だって立派な人間ですし、その子供たちを育てることは誇り高い仕事だと思います！」
「君には、私の背負っているものの重さが分からないんだよ！」とアベルはとテーブルを叩いた。
「全然わかりません！」
テーブルをはさんで、エマとアベルがにらみ合っていると、別の先生が恐る恐る教員室に入ってきて言った。
「あの、お昼の後は、お昼寝の時間なので、もう少し静かにしてもらっていいですか…」

二人はその後、一切の会話することなく黙々ランチを食べた。
ダーレーはというと、子供たちにランチを少し分けてもらって、庭の日当たりのいい場所で大満足で昼寝に入った。