敵意を剥き出しにするシンと違い、リズって人は、ヘラヘラと笑っていた。
 やっぱりこの人は、何を企んでいるのか分からないと思った。そんな表情だ。

「……二度もか?そんな偶然あると思えない。
しかも、どちらも獣族だ!」

「獣族だからと言って全部が管理出来るとは限らないよ。
 まぁ、警戒することだね?
俺が知らなくても、別で動いている可能性があるってこともあるかもしれないからね」

 リズって人は、そう言うとシンの肩をポンッと叩いて中に入ってしまった。
 その言葉は、どういう意味だろうか?

 別に動いている……?
他にも変な動きをする獣族の人が居るってこと?
 私は、心配そうにシンを見ると険しい顔をしていた。
繋いでいた私の手を強く握り締めてくる。
 それに対してどうしようもない不安になった……。

 次の日。学校は、そのまま再開された。
小山先生は、怪我で何針が縫ったため、しばらく休むらしい。
 代わりの先生が授業をしてくれた。
それと心配があるため、しばらくは送り迎えをしてもらうように連絡があった。
 そうなると秘密基地に行きにくくなる。

 煌君をチラッと見る。
昨日の事もあり、態度が余計に素っ気なくなってしまった。
 挨拶しても無視されてしまうし……。

 多分責任を感じているのかもしれない。
獣族の皇子様だし……。
 しかし、このままだといけないと思う。
せっかく仲良くなったのに……。
 また最初の頃の関係に戻ってしまう。

 授業が終わると煌君は、お迎えを待たずに教室から出てしまう。1人で帰る気だろう。
 私もルイかシンが迎えに来てくれるけど、構わずに煌君を追いかけた。

「待ってよ~一緒に帰ろうよ~?」

「……ついて来るなよ。お前は、迎えが来るんだろ?
 獣族の俺と一緒に居れば、また危ない目に遭うぞ?」

「それは、煌君関係ないじゃん」

「関係と何故言える!?俺は、獣族の皇子だぞ?
 いつ敵になるか分からない存在だぞ!?」

 私の方を向いてそう言い切る煌君だった。
やっぱり気にしていた……。
 それは、自分と一緒に居ると危険だと思い、わざと遠ざけようとしてくれていた。