「いや……ただの野犬じゃねぇ。
 本来なら人は、襲わないはずだ!!
そもそもドーベルマンは、警戒心は強いが、比較的に落ち着いた性格だ。それに……」

 煌君が何か言いかけた時、凶暴化したドーベルマンは、生徒を守ろうとした小山先生の手に噛みついた。
 そうなると生徒達は、大騒ぎだ。

 泣き叫ぶ子や慌てて逃げようとして転ぶ子。
クラスが大パニックになる。
 私は、唖然としているとドーベルマンは、私のところに向かってきた。えっ……襲われる!!

「ひぃぃっ……!!」

 私は、恐怖で固まってしまう。
するとその時だった。
 煌君が、水筒を投げてドーベルマンの頭に命中させた。
 ドーベルマンは、キャンッと鳴きながら倒れる。
煌君は、私を庇うように前に立つとギロッと睨み付けた。

『伏せろ。お前は、誰に向かって攻撃した?
命が惜しいのなら今すぐ消え失せろ!!』

 低くドスの利いた声を出す煌君だったが、何故だろう。
 その声は、不思議と鉛のように重く全身がピリピリとした。
 するとドーベルマンは、怯えるように逃げて行く。
煌君の声に怯えたように感じた。

 煌……くん?
私は、驚くように煌君の背中を見ていた。

 その後は、別の先生が駆けつけてきて騒ぎになる。
警察と保健所の人を呼び、私達生徒は、すぐに学校に避難させられた。
 楽しみにしていた遠足は、中止になってしまった。

 生徒達を落ち着かせると先生は、親御さんに連絡して迎えに来てもらう。
 私には、シンが代わりに迎えに来てくれた。

「カレン。大丈夫だったか!?」

「うん……大丈夫。煌君に助けてもらったから」

「煌?あの……獣族の末っ子皇子か!?」

 シンは、パッと煌君を捜すと睨み付けた。
警戒するように……。
 ち、違うの。煌君は、何も関係ない。
むしろ私を守ろうとしてくれた。