「何だ……リズか。来るのが遅いぞ」

「ごめん、ごめん。捜すのに戸惑っちゃってさ。
 でも、ちゃんと見つけたからいいでしょ?
それよりも怪我をしているけど大丈夫なのか?」

「……どーせ他の女と遊んでいたんだろ?まったく。
 まぁ、いい。帰るぞ」

 バスタオルを身体に巻くと小さなオオカミの少年は、立ち上がり洞窟から出た。
 しかし右足が痛いのか引きずっていた。
少年は、足を擦りながら後ろを振り返り洞窟を見る。

「妖精族か……」

 意味深い発言をするとそのまま月の光りを浴びながら姿を消すのだった……。
 その小さなオオカミ少年の存在は、のちに私達に大きな影響を与える事は、この時は知らなかった。

 次の日。私は、朝早起きをして洞窟に向かった。
新しい包帯と食べ物などを持って。
 しかし洞窟の中に入ると小さなオオカミは、何処にも居なかった。

「何処に行ったのかしら?まだ怪我しているのに……」

 雨は、止んでいたので、仲間の元に帰って行ったのか?
 そうだとしたら安心なのだが……。
ドックフードと水は、一切口をつけていないようだし、無事に戻れたらいいのだが?

 私は、洞窟から出ると森の周辺を見る。
森の木は、雨の水滴を垂らしてポタポタと落ちてきた。
 太陽の光りが輝いて青空が広がっている。

「また会えたらいいなぁ……」

 私は、そう思いながら青空を見上げた。
不思議とまた会えそうな気がしていた……。