身体は、結界の力のせいでボロボロだ。
なのにまるで、狂ったようにやり続けている。
 正気ではないやり方だ……。

「正気じゃねぇーな。アレは……」

 こちらに向かってきたら危険なため木の影に隠れる。
 様子を伺うようにシンがそう言った。
このままだと帰るにも帰れない。
 それにいつ見つかるかも分からない。するとその時だった。

「随分と騒がしい輩が居るようだのう。
 妖精達を怖がらせる輩は、誰じゃ?」

 その声は……まさか!?
木の影から見るとキョウ様だった。
 後ろには、キルア様とセイ様も一緒だ。
キョウ様は、扇子で口元を隠しながらクマを見つめる。

「獣族か……悪いことは言わぬ。
今すぐ立ち去るが良い」

 しかしクマは、正気がないのかキョウ様を襲おうと結界に体当たりして行く。
 すると結界は、さらに強くなり、バチバチとクマを感電するように弾き返した。
 それでもクマは、立ち上がろうとする。
それを見たキョウ様は、ため息を吐いた。

「不憫よのう……正気を失っても操られておるとわ。
 良かろう……私の力で、そなたをあの世に送ってしんぜよう。
 何がいいかのう?丸焼きか?それとも串刺しか?」

 キョウ様は、扇子をパチンと閉じる。
するとルイは、咄嗟に私の目を手で隠した。
 えっ……?

 ルイが目を隠すので状況が分からなかった。
な、何が起きたの!?
 私は、動揺した。目の前が真っ暗になる。
しかしゴキッとかバキッとか何かが折れる音がした。
 嫌な音に背筋がゾッと震えた。

「ルイとシン。そこに居るのであろう?
出てくるがよい」

 キョウ様は、すべて知っているかのように私達を見つけてしまった。
 こっそり隠れていたのに……。
ルイは、手を離し木の影から出ていく。
 シンも同じように出て行くと深々と頭を下げた。

「これは、失礼致しました。ただ今戻りました」

「よいよい。それよりも、ルイ。
 そなたの力で、この死体の記憶を読み取るのじゃ。
何か情報を持っているかもしれないからのう?」