「ここ最近、この山道や(ふもと)でクマが出るみたいなんです。
 狂暴なクマらしくて今、どうやって追い込んで捕まえるかを話していたところです。
 危ないので、この辺には近づかないで下さい」

 どうやら近くでクマが潜んでいるようだ。
怖いと思った。しかし、それだと困ることが……。
 妖精界に帰るには、この山道を登らないといけない。

 仕方がないので、その場を後にする。
そして警察の人が見えないところで様子を伺った。

「どうするんだ?あの山道を行かないと帰られねぇーぞ?」

「身体を小さくなれば突破出来ますが今回は、カレンを連れていますからね。
 仕方がありません。隙を見て反対の方向から参りましょう」

 小さくなると普通の人間には見えない。
しかし私は、逆で小さくなれない。
 そのために私を連れて行くには無理があった。
何だか申し訳ない気持ちになった。

「しかしクマって……獣族の中でも狂暴な奴じゃねぇーか。
 何で、ここら辺に居るんだよ?
ここは、キョウ様の所有している山だぞ!?
獣族は、一匹も住んでないはずだし……」

「最近変な輩が、うろついているらしいですからね。
 もしかしたら機会を狙っているのかもしれません。
我々が外に出る瞬間を……」

「はぁっ?ふざけた野郎だなぁ……」

 冷静に状況を判断するルイと違いシンは、舌打ちをする。
 機会を狙っているって……待ち伏せして食べちゃうってこと?嫌だ……怖い。
 私は、ギュッとルイの着物を握る。
するとルイは、よしよしと私の背中を優しく叩いた。

「大丈夫ですよ。カレンは、我々がお守りしますから」

 そして、隙を見て反対側にある山道を利用した。
行った道より凸凹していて険しいところだが、見つかると連れ戻されるので仕方がない。

 落ちないようにルイは、私を守ってくれた。
すると遠回りになったが、結界の境目付近まで来れた。
 しかし、そこにクマの姿が見えた。えっ……?

 クマは、体長何メートルあるだろうか?大きい。 
しかもそのクマは、結界を破壊しようとしていた。
 突っ込むのだが結界の力で弾き返されていた。
だが諦めずにまた突っ込んで体当たりしている。