「何からお話したらいいのか…」

彼女は店主の置いたカップにそっと口をつける。

「簡潔に事実だけ言やぁええ」

店主が助け舟なのかなんなのか、よくわからない発言をする。

「事実って…」

「ほんなら加賀見さんからの質問形式にしたらどげな?」

「質問?」

「聞きたいことを聞いてもらうだ。そいで雪穂は質問に答えて。そげするうちに色々しゃべらんといけんようになぁわの」

「俺が質問したほうがいいならそうします。いいですか?」

彼女に尋ねる。

「…わかりました…」

そうは言ったものの、何から質問していいのか…。
まずは彼女のトラウマの原因だが…

「雪穂さんには過去に何か辛い出来事があったようですが…」

彼女が息を呑んだのがわかった。
いきなりこの核心に触れる質問はまずかっただろうか?

「…はい。実はあたし…バツイチなんです…」

……バツイチ?
離婚歴があるというのか?
その若さで?

いやいや。
どんな事情であれ、受け止める。

「結婚しておられた…」

「高校卒業後…成人してすぐでした。相手は同級生です…」

なるほど…。
二十歳で結婚して、何らかの事情があって離婚した。

「離婚の原因を聞くつもりはありません。でもそれが…雪穂さんを苦しめる要因になったのですね?」

彼女は静かに頷いた。