「店長さん…。彼女も…わかっていると思います…。わかっていても…なかなか抜け出せないでいるんだと…」

「だけん、誰かの手を借りないけんのだ。なんもかんも全部一人で背負えるわけがない。人に頼るんも大切なのに、雪穂はそれができん」

甘えるのが下手な人なのだ。
元からの性格ゆえか、過去のトラウマが原因なのかはわからないが…

「そうですね…。簡単に甘えられたら…楽なんでしょう。それは誰でもできることじゃない。彼女はそれだけ…苦しんだんですよね…」

そう言って彼女を優しく見つめる。

今にも泣きそうな顔。
泣きたければ泣けばいい。
感情を、思いの丈をぶつければいい。

それを全部受け止めるために。
俺はここにいるのだから。

彼女に…
寄り添っていたいのだから。

「加賀見さん…」

彼女の声が弱々しく俺の名を呼ぶ。

「はい…」

「まだ…あなたの気持ちに応えられるかは、わかりません。でも…聞いていただけますか…あたしの、話を…」

「もちろんです…。すべて話さなくても…今、あなたが話せるだけでもいい。俺はいつでもあなたを思っていますから…」

そして彼女は。
号泣した。

落ち着くのを根気よく待つ。
店主がカップに入れた飲み物を彼女の前に置いた。