「彼女の過去の…恋愛の話なら…まったく問題ありません…」

「…恋愛な…。当たらずも遠からず、だ。雪穂から…聞ければええの…」

「ほんとに…そうですね…。今夜は振られましたけど、諦めませんから」

「なかなか骨があるようだの。アンタの気持ちが雪穂の心を開かせてくれるとええが…」

店主にここまで言ってもらえるだけで幸せだ。
少なくともこの人は俺を応援してくれている。
それだけで、頑張れる。

「ほんなら…店閉めて母屋に行こか…」

「はい…」

店主はおもむろに席を立ち、入り口に向かう。暖簾を中に入れるため引き戸を開いた。

「雪穂!」

えっ?

「お前…何しちょうか!寒いけん、早う入れ!」

彼女が…
来てくれた…。

店主に促され店内に入って来る彼女を立ち上がって迎えた。

「こんばんは…」

「まだ…いらしたんですか…」

「あなたが来るまで待つつもりでした…」

「行かないって言ったのに…」

「でも来てくれた。ありがとう」

「もうお帰りになったと思ったから来たんです…。自惚れないでください」

辛辣な言葉はボディブローを食らったかのように全身に突き刺さる。
が、俺は負けずに言った。

「残念ながらまだいました。今夜はここに泊まらせてもらいます」