ほとんど強引とも思える店主の決定だった。
そして店を閉めるからと、俺達は追い出されてしまった。

彼女を困らせるなと言った張本人が困らせてるじゃないか。
いや、元はといえば俺のせいか…。
店主はただ俺の気持ちを汲み、後押ししてくれているだけだ。

それなのに当の本人の俺が弱気になってどうする。

「雪穂さん。とりあえず家まで送ります」

「え?」

「送るだけです。あなたが家に入ったのを見届けたらすぐに帰りますよ」

「でも…」

彼女は恐らく自分のアパートが気になっているのだろう。
どんなところに住んでいようと関係ない。
そんなことで卑屈になる必要はないんだ。

「アパートの前まで送ります」

彼女が驚きの表情で俺を見た。

「知って…たんですか?」

「すみません…。先日、あなたが帰られてから…」

「つけてたんですか?」

そんなつもりじゃなかった。
でも結果的にはつけたのと同じなんだ。

「少し経ってから…あなたが曲がったほうへ向かってしまいました。決してつけるつもりではなかったんです。でも…いい気はしませんよね。申し訳ありません…」

誠心誠意謝り、頭を下げる。