今頃帰宅途中だろうか、それともすでに帰宅していて寛いでいるのだろうか?

駅までの道のりをトボトボと歩きながら彼女に思いを馳せる。
ふと、白いものが目の前に落ちた。

今夜は冷え込みがキツイなと思っていたら、雪だ…。

雪を見ると無性に彼女を思い出す。
名前のせいもあるかもしれないが、俺にとってはあの雪の日の彼女が強く印象に残っているから…。

傘がないな。
俺は彼女と違い、この寒さの中で雪にまみれてしまえば確実に風邪を引く。

さっきのコンビニに戻ってビニール傘を買った方がいいかもしれない。

腕時計を見ると九時を少し回ったところだ。
まだ電車もある時間だし、やっぱり戻ろう。

コンビニを目指し反対方向に体を向け歩き始めると。

「加賀見…さん?」

忘れようのない愛しい声が俺の背中に掛けられた。

振り向くと彼女が不思議そうな顔で俺を見ていた…。

「どう…されたんですか?また…お仕事?」

「ええ…」

言いかけて口を噤んだ。

事実を…
話すべきだと、思った。

「いえ…あなたに…会いたくて…」

「えっ…?」

「あなたに会えるかもしれないと思って、お店にお邪魔していたんです…」

「どうして…」

「お話したいことがあります。お時間を…取ってもらえませんか?」