「本当にいいんですか?」

「おぅ。任せとけ」

「ありがとう、ございます…」

「そのかわり…。雪穂がちょっとでもアンタを本気で拒否したなら…すぐに手を引いてくれ。これだけは絶対約束して欲しい…」

「わかってます。彼女を傷つけるのは本意ではありません。彼女の気持ちを一番大切にします」

「うん…。それなら…安心だわ…」

店主の後押しを受け、今夜は店を出た。
清々しい気持ちで夜道を歩く。
気持ちの在り方で寒ささえも気にならない。

店主があれだけ心配している彼女には…
本当に辛い何かがあったのだ。

それが俺の理解できる範疇を越えるほどの、非道なことだったとして。
彼女をそこから救い出すのは…
かなりの覚悟がいるだろう。

これまでの俺の経験では到底太刀打ち出来ないかもしれないが。
彼女への愛情が、その未熟な部分をきっとカバーしてくれる。

それだけの想いだと、言い切れる。

フゥ…
いつの間にか彼女にここまで心を奪われてしまっていたとは…
信じ難いけれども事実だ。

気がつくといつものコンビニの前まで来ていた。
寒さも増してきたし、少しだけ暖を取ろう。
自動扉を抜け、温かいドリンクのコーナーに向かった。

チラリと左手のフードコーナーを見ると。
一人の女性が弁当を物色していた。

彼女とは似ても似つかぬ派手な女。

そうそう上手く行くはずないよな…。