覗き込むように店主が俺を見つめる。
まるで俺という人間を見極めるように。

「…当たって砕けろだ…。雪穂は…恐らく…まぁええわ。やってみらっしゃい」

なんだよ…
気になるじゃねぇか…。

「はい。やってみます…」

「すまんな…。お友達を随分と待たせた。もう戻るだわ」

店主はそう言って立ち上がった。

俺も座敷に戻り、所在なさげに座っている折原に声をかけた。

「すみませんでした」

「あ…加賀見さん。えらく長い…」

「ちょっと話し込んじゃいました。申し訳ない」

「…別にいいですけど…。なんか面倒な話ですか?」

「そんなのではないですよ」

「でもなんか…顔が…」

「は?」

「顔が怖い、っていうか、気迫に満ちてる感じで…」

そうだな…。間違いなく気合い入れてるから。

「頼りになりそうに見えますか?」

「…うーん、どうだろ…。いつもの加賀見さんとは違う雰囲気ではありますね。頼りになるかと言われると…はっきりそうだって言えませんけど…」

「そうですか…」

「ほんとに…何があったんです?」

コイツが…
冗談や悪ふざけではなく、俺を心配してくらて言ってるのはわかってる。

でもまだ。
コイツに話せる段階じゃない。

「何もありませんよ」

俺は罪悪感を覚えながらも折原にそう言うしかなかった。