確かに俺は都会育ちだ。
田舎の実状は知らない。
でもそれだけで諦められるような気持ちじゃない。
いつのまにか…
そこまで彼女を想ってしまっている。
たった数回しか会っていない彼女を。

「たとえ仰るとおりだとしても俺は…何もしないまま諦めたくはありません…」

店主の顔を真っ直ぐに見据えて言った。

「そもそも…。雪穂はアンタの気持ちを受け入れたんじゃないだろう?それならまだ戻れる。雪穂が仮にアンタに気持ちが傾いて、それから破局してしまったら…。あの子はもう…立ち直れん…」

店主が苦しそうに言葉を吐き出す。
それほど…辛いことが過去にあったのか…。

「何が…あったんですか、彼女に?」

「それをワシの口から言うわけにはいかん。だがな…あの子が今もまだ苦しんでおるんはわかるんだ…。ちっちゃいころからずっと…見てきたけん…」

「あなたは…彼女の知り合い、なだけではないのですか?」

「ワシは雪穂の親戚だ。親戚いうても遠いがの。だが田舎は親戚だらけで。ワシも雪穂の実家にはようお邪魔しとったし」

「彼女は…どことなく何かを抱えているとは感じてます…。それが過去であろうことは推察できます。でも過去に拘って未来を見ないのは…よくないと思います…」