注文を取りにきた店主に、今日もお任せでと頼んだ。
飲みものは二人ともビールにしている。

「何が出てくるんだろ…」

「期待していてください」

俺はどちらかというと。
料理は当然だが彼女と遭遇するのも期待している、のだが。

すぐにビールとお通しが運ばれてきた。

「そちらは自然薯を海苔の佃煮で和えてあります」

お通しの説明をすると店主はすぐに立ち去った。

自然薯とは…
最近滅多と採れなくなった貴重品じゃないか。

食べてみてやはり驚いた。
折原を見ると、彼もまた驚愕の表情をしている。

「これ…海苔の佃煮って言ってましたよね?」

「そうですね」

「俺が今まで食べた海苔の佃煮と全然違う…。磯の香りがガツンと来る…」

「確かに普通の佃煮より香り高いです」

「うま~」

折原が感想を述べながら食べ進める様子を微笑ましく見つめる。

「それで早速なんですが、お願いというのは?」

「あっ、そうでした。実は一課の同期からワインに詳しい人を紹介してくれって頼まれたんです」

「ワイン。具体的には?」

「それが…ただワインに詳しい人を紹介してくれしか言われてなくて。俺の中では加賀見さんしか思い当たらなかったんです」

「そうですか…。それなら直接ご本人とお話させてもらったほうがいいですね」

「お願いします。一課の伊藤ってヤツですから」