ある日、突然彼女から別れを宣告された。
青天の霹靂、寝耳に水。
俺は俄かには彼女の言葉が信じられず、今日はエイプリルフールなのかと低能な思考になったりもした。

そしてそのとき彼女に言われた言葉が今でも俺のトラウマになっている。
そのトラウマが俺を苛み、悪夢を見続けるという醜態を晒す結果となっているのだ…。


「章悟。私たち別れましょう。いえ、別れたいの。別れて下さい」

一度のセリフで何回「別れ」を使うのだろう。
そこまで言わなくても彼女の気持ちは伝わっている。
一度だけ言えば充分だ。そう何度も言って俺を打ちのめす必要がどこにある?

別れを宣告されて驚いたのは事実だ。
だが最近の彼女の様子は以前のような熱を孕んでいなかったから薄々勘付いてはいた。
だからといってすぐに納得できるものでも、ない。

「理由は?」

「はっきり言っていいなら言うわ。でも覚悟はしていてね。手加減はできないから」

「俺が傷つくような理由なのか?」

「恐らくは」

俺が傷つく?まさかそんな…
恋愛ごときで。

いや、過去の女たちのときとは違う。
自分から欲して、未だ彼女を欲する己がいるんだ。
どんな理由であるにせよ、傷つかないはずがない。
だからといってみっともなく縋るのは…やはりできない。
それなら…
本当の理由を聞いてみるしかない。

「わかった…。教えてくれ」