「あっ、そうですね…。いただきます…」

彼女とシェアして食べ始める。
何も会話はないが、嫌な雰囲気ではない。
そこへ再び店主が入ってきた。

「飲み物おかわりせんでええか?」

「加賀見さん、ビール追加しますか?」

「…そうですね…。いや、あとは何か〆的なものを…」

俺がそう言うと店主は彼女の方を見て尋ねる。

「いつものでええか?」

「そうね…。お願いします」

店主は頷いて出ていった。

「いつものって?」

「あの…芽のはという若布を使った混ぜご飯と…蜆のお味噌汁です…」

「若布ご飯と蜆の味噌汁かぁ。体によさそうだ」

「塩気の加減が絶妙でおいしいんです。蜆は大和蜆といって…大きくていい出汁が出ます」

「それは楽しみですね」

俺はなるべく彼女に気を遣わせないよう、努めて明るく言った。