「でも、中上さんが日本酒好きとは驚きです。…あっ、もしかしたらそれで俺に腹が立たれたんですね?」

つい、先日の話を蒸し返してしまった。

「すみません…。実はそうなんです…」

「あ、俺こそすみません!蒸し返すつもりじゃないんです。ちょっと意外だったので」

「あんまりオシャレじゃないですよね」

「最近の若い女性には珍しいかなと」

「そう…ですよね。こないだ一緒だった子達とも随分違いますし」

ああ…
確かに本条や他の女性達とは一線を画しているようではあったな。

今日も仕事帰りだからだろう、眼鏡とひとつに纏めた髪、全体的に暗い色目の服装だ。
でも…
よくよく見ていると肌の色は白く、きめ細かい。
髪も艶がありサラサラしている。
本当は…
すごく美人なんじゃないのか?

「中上さん、眼鏡を外して髪を下ろしたらお綺麗だと思いますよ?」

「えっ…」

「あっ!すみません!不躾な発言でした!」

「いえ…。ありがとう、ございます…」

俺は彼女が敢えて目立たぬようにこんな格好をしているのではないかと考えていた。

でも、なぜだ?
どう見ても俺より若そうだし、自分を綺麗に見せたいと思っても不思議はないのに。

もしかすると俺と同じように、見てくれのせいで嫌なことでもあったのだろうか…。