「先日は…大丈夫でしたか?その…風邪は引かなかった?」

「…はい…。ご覧のとおり元気です…」

「すごいですね。あれだけ雪まみれになっていたのに」

「寒さには…強いんです」

「羨ましいな…。俺なんかちょっと寒いだけで風邪引きますよ」

「じゃあ…加賀見さん、あの日のせいで風邪引いたんですか?」

「いや…大丈夫でした」

「よかった…」

心底ホッとしたような安堵のため息が彼女の口から漏れる。

俺を…
心配してくれた?

「あの…じゃあ私はこれで…」

俺がボケッとしている間に彼女が離れようとした。

「ちょっと!」

思わず叫んでしまった…。

彼女が唖然として俺を見ている。
咄嗟とはいえ、少々バツが悪い。

「すみません…大きな声を出して…。あの…実は…お名前を、忘れて…しまいまして…」

「え?」

「いえ…ですからその…あなたのお名前を…」

「ああ…。中上(なかがみ)です。中上雪穂(なかがみゆきほ)と…申します」

なかがみゆきほ…
やっぱり全然記憶にない。